のぼせと冷えが、同じ患者に同居する

「顔はカーッとのぼせるのに、足は冷えるんです」。更年期の外来では、こうした相反する訴えの同居をよく聞きます。ホットフラッシュと発汗、動悸、不眠、いらだち、抑うつ、めまい――一人の患者に多彩な症状が入り乱れます。基礎編でやった通り、主訴は入口。この混沌を、の軸で解きほぐしていきます。

まず西洋医学、その上に証

更年期症状に見える訴えの背後にも、見逃せない病態があります。不正出血があれば悪性腫瘍の除外が先であり、動悸・発汗・体重変化は甲状腺機能異常との鑑別を要します。そのうえで、更年期の証は気逆(のぼせ・発汗・動悸といった上衝)、血虚腎虚肝鬱が入り混じるものとして読みます。

三大婦人科処方を軸に使い分ける

更年期の土台は、まず三大婦人科処方の使い分けです。

同じ更年期でも、「まとまりの悪い不定愁訴」か「瘀血とのぼせ」か「冷えと虚」かで、軸が分かれます。

決めきれないときは、目立つ症状で次の三つを

三大処方で決めきれないときには、目立つ症状で次の選択肢を思い浮かべます。原則は単剤で、重ねることを前提にはしません。

HRTとの位置関係 ― 対立ではなく併置

漢方はホルモン補充療法(HRT)に取って代わるものではありません。HRTには確立した適応と有効性があり、血管運動症状などでは第一に検討される選択肢です。漢方は、HRTが適さない・希望しない場合や、HRTの上に残る不定愁訴に重ねる一手として、中立に併置して考えます。どちらかを否定するのではなく、患者の状態と希望に合わせて選びます。

証が方剤を決める

同じ「更年期障害」でも、気逆・血虚・腎虚・肝鬱のどこが前面かで方剤は分かれました。病名だけでは処方が決まらず、証が方剤を決める。これが実践の核心です。

安全性では、加味逍遙散・女神散・温経湯は甘草を含み、連用で偽アルドステロン症に注意します(用量・併用を確認)。女神散・柴胡加竜骨牡蛎湯は黄芩を含み、薬剤性間質性肺炎・薬物性肝障害に留意して適切なモニタリングを行います。更年期は妊娠可能性が完全には去っていない時期もあり、妊娠の可能性は個別に確認します。

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