「生理が不順で」の一言の先へ

「生理が不順で」と外来に来た患者。周期が延びる希発月経、短くなる頻発月経、止まってしまった無月経――ひとくくりに見えますが、背後にある病態はさまざまです。基礎編でやった通り、主訴は入口。しかも婦人科では、を読むより先にやることがあります。

まず西洋医学、その上に証

月経不順の背後には、妊娠、甲状腺機能異常、高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群、早発卵巣不全、体重変化・過度な運動によるものなど、見逃せない原因が並びます。とくに続発無月経(妊娠・産褥・閉経後などの生理的無月経を除き、それまであった月経が3か月以上止まった状態)は、内分泌・器質の検索が先です。漢方は、これらの診断がついた土台の上に「この患者に合う一手」を重ねるものであって、原因検索の代わりにはなりません。妊娠の可能性はどの場面でも先に確認します。

そのうえで、周期の乱れを証の軸で見分けていきます。

血虚 ― 足りないから巡らない → 当帰芍薬散

やせ型で疲れやすく、顔色がすぐれない。めまい・立ちくらみ、経血量は少なめで、周期が延びがち。冷えとむくみもある。が足りない血虚水滞が重なった像です。ここは血を補い、を捌いて温める当帰芍薬散が合いやすくなります。「巡らせる」前に、まず「満たす」発想です。

血虚+寒+乾 ― 手掌のほてりと乾き → 温経湯

同じ血虚でも、手のひらがほてり煩熱)、口唇や皮膚が乾く、下腹は冷える、という乾と寒が同居する像があります。不妊相談を兼ねることも多い証です。ここは血を補いつつ温め潤す温経湯に寄せます。当帰芍薬散との分かれ目は「乾(手掌煩熱・口唇乾燥)の有無」です。

瘀血 ― 塊とのぼせが前面 → 桂枝茯苓丸

一方、経血にが混じり、月経前にのぼせて、下腹部に圧痛がある。冷えより滞りが前面の瘀血です。ここは血の巡りを回す桂枝茯苓丸が候補になります。「足りない」不順(血虚)と「滞る」不順(瘀血)は、補うか巡らせるかで向かう方向が異なります(両者は併存もします)。

証が方剤を決める

同じ「月経不順」でも、血虚・血虚寒・瘀血で方剤は分かれました。病名だけでは処方が決まらず、証が方剤を決める。ただし月経不順では、その手前の西洋医学的検索が常に先であることを忘れないでください。

安全性では、当帰芍薬散・温経湯とも比較的穏やかですが、当帰川芎による胃腸症状に留意します。温経湯は甘草を含むため、連用では偽アルドステロン症に留意します。続発無月経で妊娠を除外していない段階での投与は避け、原因診断を優先します。

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